この記事では、 冷蔵で届く「おせち」の全てが、作り立ての「生」 だと誤解をしている人が多いので解説していく。
「生」のおせちと 「冷凍」のおせちの違い
お重に盛り付けられた「おせち」を通販で購入しようとしたとき、「冷蔵」か「冷凍」の宅配便で届けられると思う。
まずは、作り立ての生のおせちと、冷凍おせちの違いを説明する。
食品は凍るときに、細胞が傷つけられる
食品は凍る際に細胞を傷つけられ食感が損なわれる。そして、解凍の際には旨味がドリップとして流れ出てしまうこともあるんだ。最近の凍結技術は進んでいて、極力細胞を傷つけないような技術もあるんだけど、やはり食べ比べると違いがわかってしまう。食材の冷凍耐性や凍結技術・解凍条件にも左右されるんだけど、基本的には冷凍・解凍を繰り返すことで多少なりとも食材本来のおいしさは損なわれると理解してほしい。
食材本来のよさを味わうという点では、「生」が優れているといえる。
生のおせちは、日持ちを考慮したメニューとなる。
生のおせちは冷蔵で保存している間も緩やかにだけど傷んでいく。そのため日持ちを考慮したメニューとなるので、味付けは濃くなってしまうんだ。日本の伝統的なおせちは、保存食の側面があったので、濃い味付けの食材が多いんだ。
対して冷凍おせちは、冷凍で保管している間は傷んだりすることがないんだ。そして解凍後すぐに食べる場合にはそれほど日持ちを考慮する必要もない。そのため、傷みやすい食材も使用できるし、薄味に仕上げることもできる。俺の個人的な意見だけど、若い人の舌には冷凍おせちの方が合うような気がしている。
生のおせちは年末の限られた時間で作るため、多くの数量を作れない
生のおせちの場合は長期保存できない。だから、年の瀬の限られた時間で作ることになるんだ。そのため生のおせちは冷凍と比べて多くの数量を作ることができないんだ。
冷凍する場合は、8月ごろから作り始めて冷凍保管することで、大量生産を可能にしていることが多い。
~よくある誤解~
「生」と「冷凍」にはこのような違いがある。
そのため、冷凍品にはない瑞々しさや素材本来の味・日本本来のおせち料理・年の瀬に作られた希少性などに価値を感じて、「生」のおせちを選ぶ人も多いようだ。
そのような人たちは、冷蔵で届くおせちを選ぶと思うんだけど、
冷蔵で届く「おせち」の全てが、作り立ての「生」ではない。
ということを、知っておいてほしい。
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冷蔵で届く「おせち」の全てが、作り立ての「生」ではない
おせちが自宅に届くまで
お重に盛り付けられたおせちが、自宅に届いた時の温度帯で冷蔵であったする。
この冷蔵で届いたおせちが、どのように届いたのか?お重に詰められるところを起点にすると2パターン考えられる。
- お重に詰める→冷蔵保管→宅配(冷蔵便)→冷蔵で届く
- お重に詰める→凍結→冷凍保管→解凍→宅配(冷蔵便)→冷蔵で届く
青色でマーカーを入れた部分を注目してほしい。この場合には、おせちはお重に詰められた後に一度冷凍保管され、出荷に合わせて解凍されて冷蔵便で届けられることになる。
流通過程で保存温度を冷凍から冷蔵に変更される商品を、「冷チル」(または、フローズンチルド)という。おせちの場合の一番のメリットは、家庭で解凍する手間を省くことができることにある。正しく運用されている限りは、全く問題のない流通形態なんけど、「冷蔵おせち」の販売を見ていると「無知な消費者の誤解を期待している」ように感じることがあり心が痛む。冷チル(フローズンチルド)はおせちの流通に限らず、いろんな場面で行われていて、詳しい説明は下記を参照してほしい。
「生」と「冷チル」の見分け方
詳しくは上のリンク「冷チル・フローズンチルドとは」に記載しているんだけど、製造メーカーや販売業者が冷凍品を流通の過程で冷蔵品に変更しても、それを消費者に「一度冷凍保管されたものを、解凍して冷蔵便でお届けします」と伝える義務は無い。製造メーカーや販売業者が明言していない場合は「冷チル(フローズンチルド)」を見分けることは難しいのが現状。
逆に、作り立ての生のおせちの場合は、商品説明に「作り立てのおせちを、冷蔵便でお届けします。」だとか、「冷凍されていない生のおせちを、」などとアピールすることが多いのでよく確認してほしい。
まとめ
冷蔵で届くおせちを買おうとしている人へ
冷凍品にはない瑞々しさや素材本来の味、日本伝統のおせち料理、そして年の瀬に作られた希少性などに価値を感じている人 は「冷蔵で届く」ということだけではなく、おせちの商品説明をよく読んで「作り立てかどうか」「冷凍していないかどうか」を確認してほしい。
冷蔵で届く「おせち」の全てが、作り立ての「生」ではない。
むしろ、冷蔵で届くおせちの多くは冷凍食品を解凍したもののほうが多いかもしれない。
お重に盛り付けられた「おせち」を通販で購入するときには、冷チル(フローズンチルド)という販売形態があるので、知っておいてほしい。